文化的生活ノススメ

●iPS細胞(八代嘉美

数か月前に読んだiPS細胞の本がfor Beginners of Life Scienceとすれば、本作はfor Beginners of Regenerative Medicineといった風でしょうか。
基本的な発生や分化という部分の話が丁寧に書いてあり、こういう分野に疎い私も理解するのが容易な内容でした。
そのあたり、この作品には非常に親切さがあります。
あぁ、これが再生医療の世界か、これが世紀の大発見かと、ようやくしっかりと理解できた気がしました。
ただし、平易な表現で書いてあるとは言え、一般の方がこの本を読んでどこまで理解できるものかなとも思いました。
また総じて平坦な内容で、読み物として楽しむというよりは手軽に知識をつけるために役立つ本という印象です。
この点、同じLife Science の世界を描写しながら、読み物としても素晴らしい福岡伸一先生のベストセラァと比べると物足りないのは仕方がありませんね。

おすすめ度:★★☆☆☆


●美女と竹林(森見登美彦

氏が自身のblogで「無益で楽しい文章だよ」と語るように、実に無益極まりない作品でした。
費用対効果を人一倍考慮して消費活動に取り組む私は、未だかつてこれほどまでに内容のない作品を手にしたことがありません。
何かもう「内容がないよぅ」という一言に尽きるいうのです。
しかしながら、実がないのに面白いのです。
つまり、この内容でここまで楽しませる氏の文章力はすごいと思います。
後半のMBCのCEOの下りはもうニヤニヤが垂れ流された状態でした。
類稀な妄想力の為せるわざでしょう。
彼の作品は私にとって麻薬的魅力を秘めているようです。
これだけ氏の作品を絶賛する私は、知人にあう度に「オモシロデスヨ。オモシロイデスヨ」と宣伝しているのに、今だに「読んだよ」という声すら聞こえてきません。
しかし、性懲りもなくまたまた私は叫ぶのです。
京都を愛する諸君!だまされたと思って彼の本を読んでごらんなさい!
そこには素晴らしい神秘な世界が広がっているよ!
でも、ホントにだまされても責任はとらないよ!


おすすめ度:★★★★☆


●うめめ、他数冊(梅佳代

皆様、彼女をご存じでしょうか。
いま最も勢いのある若手フォトグラファー(らしい…)です。
本屋でふと目にして手に取ったんですが、何とも雰囲気があっていいんですね。
私は“非日常”に美徳を見出す人間なのですが、彼女の移しだす世界の多くはごくありふれた世界です。
某書籍販売サイトのレビュを見ると、賛否両論わかれるようですが、私は素晴らしいと感じています。
というよりは批判するほどの知識がないだけかもしれません。
そういえば誰かが本当に優れた作品は賛否両論わかれるものと言ってi
たな。
つまり、ターゲットにすっぽりはまれば◎、そうでなければ×なのです。
私は『じいちゃんさま』が特に気に入りました。
月並みな感想になってしましますが、そこには家族の愛が映し出されているように思います。なかなかと世知辛い現代ですが、こんな所に幸せを手にするヒントが隠れているのかもしれません。
“平凡に潜む一瞬”の数々は、自分にもとれるのではと錯覚させます。
そして、「ちょっくら写真に挑戦してみようかしらん」なんて思ってみましたが、カメラをぶら下げひた歩く己の姿は、どう見てもカメラ小僧以外の何者でないので、それはそれは残念としか言いようがありません。

おすすめ度:★★★★☆


朝晩めっきりすずしく夏も終わりのようそうです。
読書の秋、芸術の秋。
一年でいちばん文化的生活を楽しむのに適した季節だとか。
人生で一度くらいは、そんな高尚な秋を満喫したいものですな。

それにしても明治統合の報道、かなり衝撃的です。
最も安定とされる食品業界といえども、先が読めない現代なのだなぁ。



ついさっき確認してみたら、「iPS細胞」の著者ご本人の足跡見つけました。
世の中狭いと関心するべきか、web社会の進化に驚嘆するべきか。
とにかく素人が偉そうに辛口評論などするべきでなかったと後悔の気持ちなのです。