図書館では久しく本を借りていない

今日は知人と三重県立図書館で開催されたシンポジウムを聴きに行ってきました。

「明日の県立図書館」と銘打ったシンポジウム、昨年に石川直樹さんの講演を聴いた際に知ったイベントでした。
http://www.library.pref.mie.lg.jp/app/details/index.asp?cd=2010110101

今回参加したのも石川さんの話をまた聴きたいと思ったのが実のところです。



宗教人類学者の植島啓司さん、石川さんのキーノートアドレス。その後、板倉加代子さん、女優の萩美香さんのお二人が加わってのパネルディスカッションという内容でした。

「図書館」という場所、これまでの人生で、私にはほとんど縁がない場所でした。

利用の記憶は、せいぜい学生時代のテスト前程度ですから、図書館の第一義とはずれていますよね。

シンポジウムの中にも話ありましたが、図書館のイメージといえば、「真面目」、「暗い」、「静か」といったネガティヴなものばかりで、もともと読書も好きでなかった私にとっては遠い存在でした。

因みに、ここ数年でようやく人並みには読書をするようになりましたが、未だに図書館で本はかりる事がありません。読みたい本は書店で購入するのが主です。

返却期限を気にするのがいや、読みたい本はすぐ(その瞬間)にでも手にしたい、本を所有する物質的満足感、という辺りが大きな理由だと考えています。

しかしながら、理由はそれだけでなく、やはり図書館という存在自体に対して魅力を感じにくい。という部分はとても大きなものとしてあるように思います。

私は書店でブラブラと1時間でも2時間でもあれこれさがすのが好きですし、同じ楽しみは図書館でもあってしかるべきと思うのですが。

きっと、先に上げたイメージによるものだと思います。

そういう視点だけでも、図書館はまだまだより良い場にするためにやれることがあるんじゃあないかな。



さて、いくつかシンポジウムのなかで面白かった話題に触れておきたいと思います。



○検索では調べられないことがある

植島さんのスピーチで出てきていました。

Web の進化によって知識そのものの価値は薄れています。

私も最近は、何でもかんでもgoogle を使って調べる事があたりまえになってきており、かなりおおげさに表現すればgoogle にかからない情報は世に存在しないなんていうのに近い。そんな状態です。

しかしながら、当然そんなはずはなく、実際に本で探したほうが深い内容を知ることが可能な場合も多くありますし、現場で、生身体で、経験してみなければわからないなんてことも多い。

因みに、「今の」大学教授に必要な素養は現場のちから、とおっしゃていましたが、研究者としてやっていくには肌感覚でのセンスが必要ということなのでしょうね。



○千書は万里の旅

石川さんのスピーチで出てた言葉です。

中国の故事で、計算すると「1冊の読書は40 km の旅に匹敵」という意味だそうです

40 キロはさすがに言い過ぎじゃね!?なんて思いますが、読書のもつ素晴らしさをよく表した言葉ですね。

我々の多くは、本を書けと言われてもなかなかできないです。きっかけ云々でなく。

書籍を出版するということは、一部の何かに優れた方の特権であることは昔も今も同じです。

その優れた人物が、その時点での最良知識を形にしたのが一冊の本ですから、読み手の姿勢次第では、そこから得られる事はが多いのは当然といえば当然ですよね。



○不必要の重要性

これはどういう事か。

私の解釈も組み込んで書きますが、効率よいことばかり追求しても厚みが出ないよ。ということでしょう。

例えば、昨今、何か情報を得ようとした際、前述のとおり検索サイトを使って調べるのはかなりの主流になってきていると思います。

しかし、必要なことがすぐに簡単に見つかるということは、自分の目的とした事以外(不必要)を知るチャンスを捨ててしまっているということになる。

これは、確かにそうだなぁと思います。

この不必要に鍛えられて、バランス良く思考的マッチョになっていくっていうのはあるとおもうんですよねぇ。

そもそも、迷子になりつつゴールにたどり着くことで、記憶に刷り込まれるというのはあるでしょうし。

それを考えれば、書籍って本当に素晴らしい、知識習得の手段だなぁって思います。

それに、図書館や書店に足を運べば、自分の目的以外のものに触れる確率は大きくあがりますからねぇ。

最近はネットに依存していて、検索バカになりつつあるので、今年は今一度、書から学ぶ価値というのは考えたいと思います。



○リファレンスの話

植島さんのおはなしの中で、ネパールのエベレスト書店というところの話が出てきて、そこの書店員さんはお店に行くと植島さんの好きそうな本をいろいろ持ってきてオススメしてくれるのだそうです。

面白いですよね。こんなお客と店員の関係性は日本ではあまりないように思います。

その他にも、博物館の学芸員と図書館の司書の対比の話もありました。

図書館司書も展示の企画をする博物館学芸員のように、もっと自分の個性を表に出して情報を発信するという取り組み事をしてもいいのではないかという意見。

私も、大いに賛成です。

きっと、そういう姿勢が盛んになったら、抱える司書さんの個性がそのまま図書館の個性になるのでしょうね。

それは即ち、「真面目」「暗い」「静か」な図書館、一様に魅力的でない図書館、からの脱却につながるのではないかと思います。

博物館的企画だけでなく、図書館のアセットたるおすすめ本を発信していったり、本の置き方を工夫するなんてアプローチはおもろいと思うのですが。

幅允孝さんみたいな事ができる人がいたらおもしろいだろうなぁ。

海外の司書は年に600冊をノルマにしている、だから人に勧めることができる。みたいな話は「へぇー」でしたね。

こう考えると、かつてのイメージとは随分違った、現代図書館という構想も可能なのではないか、と思いますね。

日本で最も身近な文化的空間が活気付けば、国民の知性にもつながるでしょう。大いに今後の期待したいです。



○物質としての本

この時代で、書籍のテーマですから、電子書籍の話も出てきました。

4名のどなたも、大変によく本を読まれる方ばかりで、みなさん電子書籍についてはそこまで好意的でないように見えました。

帯や装丁も含めての本が好き、本の方が記憶に残りやすい、などの意見があったように記憶しています。

この話題については、おそらくどんどんと電子書籍化の流れは進行していくので間違いないだろうなぁと私は思っています。

最近まで、電子書籍って読みにくいんじゃ?なんて思ってましたが、全然そんなこともなかったですしねぇ。

嵩張らないというのは、電子書籍のもつなんとも大きな魅力ですし、写真の多い雑誌なんかであればそのモノを動画で見れたら感覚的に捕らえやすく面白いでしょう。内容に合わせた音楽が流れてくるなんていうのもいいですよね。

学校の教科書なんかでも、より立体的にものを捉えられる可能性はあると思います。

でも、ビジュアル化は想像力形成という点ではマイナスになりそう。

あとは、感覚的な意見ですが、文章を読むということに限っては定着も悪くなりそうだなぁと思いますね。

時期尚早。私はしばらくは紙媒体だろうなぁと思っています。



中々、図書館を利用しない自分にとっては発見の多いシンポジウムになりました。

やっぱり、実際に足を運んでみるというのはだいじだなぁと改めて思いました。



講演後、植島さん、石川さん、お二人の著書を購入してサインも頂きました。



どさくさに紛れて萩さんにもサインを頂き、写真も一緒にとって頂きました。

萩さん、2007年度のミス日本グランプリなのだそうで、今まで身近にいなかったタイプの大変おきれいな方でした。
http://www.diamondblog.jp/mika_hagi/

あまりこういう安易な表現は好きでないのですが、オーラというべき雰囲気を感じました。

しかし、見た目以上に、会話の中での言葉選びのセンスや聞き取りやすい話し方、そこがすばらしく魅力的だなぁと感じました。

津の出身だそうで、中高ではディベート部に入っていたのだとか。

知らなかったのですが、ディベートって事前にものすごい勉強してから望むのですね。

おそらく、その時代に鍛えられたのでしょうが、とにかくに知性あふれるスマートさんでした。

これを見ると、中学生あたりで盛んにディベートを学ばせたら面白いのではないかなぁと思いました。

賛成・反対どちらになるかわからないディベートでの事前準備は、偏りなくやる必要があるのですから、質の高い情報の集め方も学べるのでは。

彩色健美の萩さん、ぜひ、今後のご活躍を応援したいと思います。



帰りに併設のcafe によって東洋軒のブラックカレーをいただきました。

濃くて美味しかったです。



イルミネーションは今月10日まで。