生と死と

動的平衡福岡伸一
生物と無生物のあいだ」、「できそこないの男たち」に続き、福岡さんの作品は3作目。
率直な感想を言えば、前に作を読んだ時ほどのインパクトや真新しさはなかったように感じました。
しかし、読み物としてやはり大変読みやすく、短時間で読み切れる面白さでした。
バイオ産業に対する話、確かになと生物あがりの私としてふむふむと読みました。
バイオ、IT、ナノの時代だなんて言われて早10年、今だにバイオの時代はその足音すら聞こえてきませんから。
結局はやはり、バイオはサイエンスの対象ではあってもテクノロジーとして追い求めるようなものでもないのかな、倫理なんかの問題も含めて。
また、コラーゲンのくだりなんかも、確かにそうなんだろうけど、私の職業がらああいう風に言われると困ってしまうのですが。
一番興味がもてたのは最後の章。
敢えて表面的で物的な欲望ばかりを求めないでもいいのかなという気分にさえなる。
LOHAS(LIfestyle Of Health And Sustainability)という価値観を持った人が増えているのも、ある種の豊かさを手にして、内面の大事に気がついたからではないでしょうか。
それにしても生命のダイナミクスに関する話は何度触れても不思議な気分にさせられますな。


おくりびと滝田洋二郎監督)
持前のミーハー心がうずき、リバイバル上映を見てまいりました。
納棺師という死者の旅立ちを世話する生業のお話。
予想以上にもっくんがハマってて、山崎努はやっぱいい味出してて、広末さんもまたいい感じの年齢具合でこれがいいんだ。
実をいえばね、昨日ほぼ日のサイトで見て気になってたんですよ。
http://www.1101.com/okuribito/index.html
それがアカデミー賞のオスカーに輝いちゃったもんだからさ。
人は死を触れた時に最も生について考えるだなと改めて感じました。
祖父が亡くなった時の事を思い出し、気持がグッと入ったこともあり何だか感じるところが色々あったと思います。
死に対してのイメージが少し変化したような気もします。
日本では死に対してネガティブなスタンスをとることが多いですが、どうせ誰にでも待ち受けている事ならば、もう少し前向きにとらえるのも良いのかなといった感想です。
でも、やっぱり身近な人の死に直面すれば悲しいんですけれどね。
作中に出てきた「石文」の話、とても素敵だなと思いました。
今後の、人生で私にも石文を交換する人が現れるのでしょうか。
最期の時を心を込めて見守ってくれる人が現れるのでしょうか。


何か、「動的平衡」という視点、ある種無機質的というかサイエンスの側面から生命というものをみた直後にこの「おくりびと」という作品を見たことで、複雑な感情や文化を持つ「ヒトという生命」の不可思議・奥深さを感じました。
納棺師の世界に興味をもたれた方、青木新門さんの「納棺夫日記 (文春文庫)」という本がございますのでお試しあれ。(わたしは読んでないですが…)


そういえば、今日マフラーを二枚巻いて通勤してしまいました。
ロッカーにマフラーをかけようとして、もうすでに一本かかっているのを見つけ、そこで初めて「あっ、二本してきちゃった」って。
(すでに一本かけたことすら、意識になかったわけです。。。)
どうやら、私の神経細胞(ネットワーク?)の動的平衡は、齢25にして早くも無秩序状態へ向けて加速し始めたようです。
泣けるぜ、こんちくしょう。