冒険家“石川直樹”の成分

初めて石川直樹という人を知ったのはこの一枚の写真を見て。

2008 年のap bank fes で、私はこの写真がプリントされたT シャツを気に入り購入したのでした。

この時はもちろん、ただただえぇデザインだからかったに過ぎません。

それから、しばらく忘れていた。というよりはこの頃はまだ彼の存在を気にとめることはなかった。



急に石川さんが気になりだしたのは、「ほぼ日」でこの連載をみてからだったと思います。
http://www.1101.com/ishikawa_eric/index.html

それからは、雑誌かなんかで見かけたら読むようにしていて、でもこういう方ですからすごく遠い国のことって感じでしたね。

それが、8月の終わりだったか、9月の頭だったか位に、たまに行く本屋メリーゴーランドさんで偶然石川さんの名前を見かけたのです。

きいてみると、富士山の絵本が縁となって講演に来ることがきまったとのこと。(以前にかいた、荒井良二さんもここの講演会です)

受付開始してすぐに予約し、楽しみにしていたのがようやく本日あったという事です。



正面の出入り口にも

裏の出入り口にも



ちょっと早めにお店いってみると人がごった返しておりました。

入店後30 分くらいソワソワしながら、本を立ち読みしながら待っていると、石川さんの到着。


濃いナイロンのジャケットに淡茶のパンツ

焼けた黒い肌と精悍な短髪

赤いNorth Face の筒型バッグを背に


ぱっと見た感じ、そのあたりにいそうなお兄さんといった風でした。

でも、清潔感があって、とても誠実な雰囲気の方でした。何というかいやらしくない男らしさをまとった印象でした。

ずばり、もてもての気配をとっさに感じました。


実は、私は只のミーハーやろうですから、知識補強のために、今回事前に石川さんの本を一冊読んから行きました。(写真集はぱらぱらしたことあったんですがね)



●全ての装備を知恵に置き換えること

石川さんが執筆したエッセイを集めたもので、たまたますぐに手に入ったのが選択の理由です。

表紙の写真とタイトルの組み合わせが抜群にかっこういいです。

入門的に石川さんを知る上でよい本でした。

山の話、海の話、極地の話、空の話。

コレだけ見ても、彼が冒険かと呼ばれているのが分かります。

文体自体は、文学的でとてもきれいでした。本当に冒険と写真を生活の柱としている人の書く文章なのかという程に。

個人的には、王道文学を読むのが苦手なので、もうちょっとスパイスというか暑苦しいにおいのするのがすきだなぁ。

とにかく、講演前に読めてよかった。



さぁ今日の話に戻りましょう。

聴講者は、圧倒的に女性が多かった。男性は1割2割くらいでしたか。

若い、イケメン、冒険家、写真家、ですからね。

名古屋とか、県外からの方も多いようでした。

歳近気ががついたけれど、UNIQLO いくと今どっかん壁に石川さんがいますよね。


さて、講演の内容ですが、まず今回のきっかけとなった絵本“富士山に登る”をスライドにのせて石川さんが朗読してくださりました。作者の声で聴けるのはやはり素晴らしい体験。

石川さん、かなりクールというか淡々と語る方でした。

富士山は大きな山に行く前の、高所順応に最も適した山なのだそう。

何度も読み返すたびに発見のある本、のような存在なんだとか。

私はこの名峰がすぐに見える場所で青春期を過ごしたのに今まで登ったことがなく、是非とも登らねばならないという思い強めました。



その他、チョモランマ登頂の映像、“polar”や“vernacular”の話、写真なども交えてお話頂きました。

どれも、写真をぱっとみたり、文章を読んだだけでは分からない面白さがあってわくわくしました。

情報化社会で知識の価値は薄れた、なんて事を聞きますが、やはり“語る”という事が出来る知識はすばらしいですね。ほんと。

経験することは一番いいし、それが出来なければ経験した人から聞くのがいい。今回のはまさにこれですね。

それも出来ない時はせめて本を読むのです。

面白いお話や写真が多かったですが、チョモランマの映像はお話も含めて、体感的でよかった。貴重です。

vernacular(風土という意味)は、写真が良かったです。

たぶん、性質があきやすいというか、同様な(似ている)ものが多いと駄目なたちで、色々なものが見れるところで私にとって面白いんですね。

とにかく何もかもが未知で、たいへんに好奇心を満たされる時間でした。



質疑応答の時間がありましたが、店主の増田さんのお話も面白かった。(ここからは本で得た知識も混じります)

石川さんは、幼少の頃に多摩川の最初の一滴をみたいという好奇心から上流を求め、気がついたら山の頂上にのぼったんだとか。

これが登山の始まりだったそうです。

初めていく土地では、出来るだけ最も高いの場所から、その土地を俯瞰するそうで、この時の体験が何かもとになっているかもしれませんね。

そのほか、高校生の頃に、親には反対されていたインドに一人旅にいったりとかいうのも、行動力に驚かされた。(親にはシンガポールに行くといって旅に出たそうです)

そのほか、大学受験におちた後の居候エピソードとかも行動力のインパクトでしょうか。

ここで思ったんです。こういう行動につながる源って環境だよねって。

店主の増田さんとの会話に出てきた方たちは、“勇”名なかたばかり。(増田さんもすごい方なのですね)

そういった一流との交流という人的な環境、そして本だけは沢山まわりにあった、という知性につながる環境。

増田さんがしきりにおっしゃっていた、おじいさまの石川淳さんの影響も、間接的にかもしれませんがかなりあるのでないでしょうか。

恵まれていたといってよいでしょう。

もちろん、本人が好奇心を以って、それを行動に移すだけのエネルギーがあったからこそですが、そういうものと無縁の環境にいた私なんかはうらやましく思ってしまいました。

最近よく思うのですが、子の人格形成に役立つ環境を用意する(『与える』ではない)ことは、親の大事な責任ではないか。(自分の両親を責めてるわけではないですよ。自分をここまで育て、価値観を与えてくれた2人には大変感謝していますから)

親と過ごす数年は、やはりその人の特徴的な性質をつくる上で大事な時間です。

だから、親はしっかりとした知識をもって、そこから自分の信じる価値観というものを紡いで、価値観の軸を持っておく必要がある。いわゆるその人の哲学ですね。

ただ、やっぱりそんなことは、理想論でしょうかね?

確かに、そんな完璧人間なんてのはいないですし。でもそういうつもりでいることはできるんじゃぁないかなぁ。完璧なんて無理だけれど、意識することくらい。

私個人としては、だからこそ、読書は大事で、脳というコンピュータで自分の正解を導き出すんです。

己の哲学は、人の哲学(考えを)ぱくった集合。いろんな本(考え)に触れたほうが深みがますんだよ。

訳分からんね。とにかく、本はいくらでも読んだほうがいいよって思うってこと。

本をよく読むのは私の理想の姿の必要条件。これに経験がプラスされると石川さんのような、“存在”ができてくるんでしょう。

実際、石川さんもかなり読書が好きだそうで、それは1冊本を読み、今日短時間でお話を伺っただけで分かりました。

一つの本を読むことは数千キロを旅するのと同じ。とはいい言葉でした。


まとめると、石川直樹という人は、障壁をさっと越える強い「好奇心」、興味を与える「人的環境」、積み重ねた読書由来の「知性」、そしてこれらの要素をもとに重ねた圧倒的な「実経験」から形成されている。そんな印象でした。



石川直樹という人は生きる濃度がとっても違うな」というのが本日の私の一番の感想です。



時間は平等、なんて言う人がいますけれど、それは物理的・理論的な話であって、精神的には全然平等なんかじゃないんだよ。

そして、その精神の部分というのは僕たちの人生の中でなかなか大きな位置をしめているんだね。

今更、彼みたいに濃い経験は出来ないから、だからせめてボクは「読むという冒険」をこれからも続けていこうと思うのです。




今回も本を購入しました。

ケチった要素は否定できませんが、租借の力がないので、写真よりも文を選びました。

梅佳代さんなんかも、とっても好きな方ですが、僕は彼女のとる写真以上に、彼女が発する言葉や文章に興味あるのです。
(こんなの発見!http://www.1101.com/news/2007-11-16_ishikawa.html

サインも頂きました。

例によって、またap のシャツの写真が、、、とか話しかけました。しっかり答えてくださった。

あと、座右の銘的なのもお願いしましたが、ないのだとか。

握手は、冒険家らしいたくましさを含んだ暖かな手でした。


その他、熊野古道を舞台にした“天海人”というブックレットを頂いた。


藤代さんなんかものっていて、free にして素晴らしいものでした。



また来年頭に、石川さんをパネラーに迎えたシンポジウムがあるそうなので、是非とも行ってみたいと思います。



長々下手な文章書きましたが、それだけよい体験だったという事。

好奇心をもっていれば、田舎でもこういう素晴らしい体験が出来るんだってことですね。

私が歩むのはちっぽけな人生ですが、それでも未知なる明日に向かって一歩一歩前進していくのみですね。